無題
あの時僕は、嫌われてもいいと思って行動していた。
寧ろそれを望んでいた。
君が僕に飽きて、愛想を尽かして、
僕を捨てることを望んでいた。
どこかで。
捨ててもらえてきっと嬉しかった。
せいせいした。
色んな感情を捨ててしまいたかった。
もう重たいのは嫌だった。
寂しさは残った。
愛していたから。
けれど全てを嘘にして投げ出した。
君は僕の嘘を簡単に信じた。
君には僕の本当がもう見えなくなっていた。
僕が信じた君が居なかったように、
君が信じた僕もまた、居なかった。
仕方のないことだと思った。
これでよかったのだとも思った。
君はすぐに新しい恋人を見つけ、
君を愛す人達に囲まれて、
きっと幸せだった。
僕がいなければ君の幸せは成り立つ。
目につかないところに身を潜めていればいい。
そんなこと分かっている。
けれど僕はまだ僕自身の幸せを望んでいる。
君の幸せなど、きっともうどうでも良くなっている。
僕が仕向けた通りに君は、僕を否定し続ける。
関係のなくなった今でもまだ。
君は僕を背負っている。
僕もまた君を拭いきれないままでいる。
想っている訳ではない。
君もきっと。
憎んでいるだけだ、お互いに。
疎ましく思っているだけだ。
君を見かける度に、胸の奥底が少し痛む。
君との記憶なんて、薄情な僕の頭にはほとんど残っていないのに。
心に刻まれている。
痛みが。
君との間には、
苦い苦い痛みしか残っていない。
いっそのこと、
語り合って、
ぶつけ合って、
お互いに納得してしまいたい。
いつまでもいつまでも、
このままなのは苦しいだけなのに。
大方、僕のせい。
少しくらいは、きっと君のせい。
君の真意は僕には分からない。
分かろうとも思っていない。
傷つかないように交わらないように僕は避け続けるだけ。
出来れば君にもそうして欲しかった。
僕はきっと前へ進んでいる。
それを邪魔しないで欲しい。
君は周りに支えられながらきっと進める。
1人では何も出来ないかもしれないけれど。
僕は、1人だって前へ進んでやる。
君へ抱いた感情はもう嘘にしてしまった。
それでいいから、
お願いだから、
もう放っておいて欲しい。
何のために嘘にしたのか分からない。
互いを少しでも救いたかっただけなのに。
妙な形で残ってしまった。
けれど執着しているのはきっと、
君の方だ。
僕はもう君のことなんてどうでもいい。
君が僕を間違った目線で見続けて、
勝手に僕に怒りを向けなければ。
それさえなければ、僕は君に警戒しなくてよくなる。
思うだけに留めて欲しい。
いつだってきっかけは君からだというのに、
君はそれに気付いていないから厄介だ。
僕と君の間にはなんの理解も存在しない。
もう何も。
君が理解している僕は、一体誰なんだろうね。
僕が理解している君だって、真偽なんて僕には分からない。
終わらせたくないのは君の方。
無駄に傷つきたがっているのも君の方。
僕は君が思っているよりもきっと、
前の僕のことなんか忘れているよ。